離島トリビア,  歴史上の人物

明恵上人、島に恋文を書く

こんにちは、ドクターリトーです。

今回の記事は少し変わった内容でして、明恵(みょうえ)上人という、鎌倉時代の高名な僧侶についてです。

 

◾️明恵上人

 

名前を知っている人も多いかも知れません。この人、面白いから、大好きなんですよね。

 

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この木の上で座禅を組んでいる人が、明恵上人です。ちなみに京都の神護寺が彼の住まいでした。

 

◾️夢を記録し続けた明恵上人

 

明恵上人については、心理学者であった故河合隼雄が執筆した「明恵 夢を生きる」に詳しく書かれています。

 

明恵上人は変わった人で、19歳の時から60歳で死に至るまで、約40年間にわたって夢日記を記録し続けました。

(世界を探しても、数十年も見た夢の記録を書き続けた人は明恵上人と合わせて二人しかいないらしいです。もう一人はフランスのサン・ドゥニという人)

 

記録にできるほどに、自分が見た夢を鮮明に覚えている時点ですごいと思うのですが、まさに文字通り、「夢に生きた人」であったと言えるでしょう。

 

◾️島への手紙

 

明恵上人には他にも不思議なエピソードが多数残されており、中でも有名なのが「島への手紙」の話です。

 

和歌山県に「苅磨(かるま)の島」という島があるそうです。

 

明恵上人が子供の頃によく遊びに行っていた島らしいのですが、明恵上人はある時、島へと向けて一通の手紙を書きました。

それは人間に対してではなく、島そのものに書かれた手紙でした。そしてその手紙を弟子に苅磨の島へと届けさせたのです。

 

弟子が「どこに持っていけばいいか」と尋ねると、「苅磨の島に行き、栂尾の明恵房からの手紙だと高らかに呼んで打ち捨てて帰って来なさい」と明恵上人は答えたということです。

 

その手紙に関しては、弟子は言いつけ通り、島に置いて帰ってきたので原本は残っていないようです。

 

しかし「伝記」という書物に詳しい内容が記されています。このような内容であったそうな。

 

◾️恋文

 

「 華厳十仏の前に島の法理を思いますと、私達の立っている国土というものは、仏の体の一部といえましょう。したがって島殿も当然のことながら、如来そのものと言えます。そのように思いますと、涙が目に浮かんできます。
過ぎ去った月日は遥かに遠く、磯に遊び、島殿の元で遊んだことなど、様々なことが思いだされて忘れられず、恋慕の心をもよおしながら、島殿を訪問する暇もなく過ぎてしまいましたが、それは私の本意ではありません。
そのようなことをつらつら思い浮かべておりますと、桜の大木を思い出して恋しくなりました。お訪ねして、その後お変わりないですかと申し上げたいと気が早るところですが、言葉を話さない桜の元へ手紙を出すと、気が狂った人間だと批判されるのが嫌で、世間の常識に従って謹んでいました。
しかし今では  、気が狂ったと思われても良いと思うようになりました。

そのような人たちとは友達にはなれないと思い切って、手紙を差し上げる次第です。
大自然を友としまして、何の咎め がありますか。
仏心を学ぶに、人界だけでなく自然を友として何の咎めがありますか。
知恵の働く人よりも、本当に面白い遊び友達には、あなたのように深く信頼出来る方こそふさわしいです。
島殿へ」

 

このような内容であったようです(手紙を、おおまかに現代語に訳してみました)本当に見事な島への愛情の注ぎ方ですよね。

 

◾️離島への愛情を見習いたい!

 

手紙の最後では、人間よりも島の方が、友人にするに値する、とはっきりと言っています。

 

私、ドクターリトーも離島を心から愛しているつもりですが、明恵上人には叶わないかも知れないと思わせるほどです。

 

やはり悟りを得た人の感覚というのは常人とは違うものらしく、彼にとっては人間と島とは同等の存在でした。

 

本当にそうかも知れません。「物質」と「心」とか、「生物」と「非生物」という区別をつける事が人間は好きですが、実のところ二つにあまり差はないのかも知れません。少なくとも明恵上人ほどの境地に立つと、自然とそう思われてくるようです。

 

◾️島には心がある?

 

島に手紙を書く。しかし、この感覚は私も分かるような気がします。

 

島旅をしていると、島に心があるのではないかと、時折感じることがあります。

 

フェリーで島に入る時であったり、あるいは島を離れる時であったり。

海から島の姿を見ていると、自分も島から見られているような、そんな気分になることがあります。

意識過剰でしょうか。そうなのかも知れません。

 

 

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