「離島」とは如何なる意味を持つ空間なのか?少し哲学的に(?)考察してみる。
こんにちは、ドクターリトーです。今回の記事は、いつもとは違った内容。「離島」とは如何なる意味を持つ空間なのか、考えてみよう!という特別企画。一応私なりの離島論でございます。
◾️まず「離島」という語は何を指すか?
離島とは一体なんでしょうか? うわー、難しい。
ただの「島」ではなく「離島」というからには、どこかから離れているというニュアンスがあるからでしょう。
どこから離れているのか。それは日本の場合であれば、本土からに違いありません。もしくは大きな島か。
つまり「離島」という言葉には、中心部から「離れて」いる「島」であるという意味合いがあります。
要は、マイナーな存在ということですかね。
◾️「島」の定義
島の定義とは? 辞書で引くと、「周囲を水で囲まれた土地で、大陸以外のもの」と記されています。
つまり島とは何か?ということを考える時に、 「水」を外して考えることはできません。
水とは、たいていの場合は海、時に湖だったり河川だったりします。
つまり水で周囲から隔てられた土地が、離島。
島には実はもう一つ定義がありまして、「ある仲間内・なわ張りなど、他から区別されてまとまったもの」というもの。
つまり閉鎖性というのも、離島の持っている特性ということでしょうか。
◾️離島の特性とは?
といったことを適当に考えていると、離島の特性がだんだんと明らかになってきました。
離島の特性。それは閉鎖性にあります。なぜ閉鎖的なのか、それは周囲を水という障壁に囲まれているからです。
周囲を水に囲まれているから外から人が到達するのが難しいのです。だから、閉鎖性が保たれている。
そのことから、アクセスの困難さも特性と言えるでしょう。
アクセスは困難ですが、どうしても行くことはできない訳ではない。それが離島です。
アクセスが困難というのは、島へと行くのが大変なだけでなく、島から出て行くのも大変だということも意味します。
そして中心から離れた周縁部である、という特性もあります。
◾️離島の持つ空間としての意味を探る
私はこれまで多くの島を訪れてきたこともあり、島には様々な側面があるということを身を持って体感してきました。
アクセスの困難さと、周縁部であるということが、離島に色んな性質を持たせているんです。離島というのは、多義的な空間。
それらを実例を挙げながら、羅列していきたいと思います。
◉隔離施設を設置する空間としての離島
ハンセン病隔離施設(香川・大島)
毒ガス製造所(広島・大久野島)
風俗施設(三重・渡鹿野島)
有害なものやいかがわしいもの(としてみなされたもの)を、人目に触れないように押し込めておくための場所としても、離島は機能してきました。
というか、離島のイメージというと、このあたりが真っ先に思い浮かぶ人も多いかも知れません。
離島の閉鎖性という特性が、マイナスなものを隔離しておくのに有効なのです。
◉流刑地空間としての離島
八丈島
隠岐諸島
佐渡島
その閉鎖性ゆえに、離島から逃げ出すことは難しいので犯罪者を送り込むにはもってこいでした。まあ「天然の刑務所」って感じですかね。
上二つは、離島の閉鎖性がネガティブに働いたケースです。
◉楽園、理想郷としての離島
波照間島のパイパティローマ伝説
中国の蓬莱島伝説
沖縄のニライカナイ伝説
これらはプラスの意味合いを持っています。
離島はアクセスが難しいので、この世離れした理想郷を思い描くにはもってこいの場所でした。なんでも願いが叶ったり、不老不死の妙薬があったり。
離島の閉鎖性がポジティブに働くと、理想郷になります。
アクセスが難しく閉鎖的であるという性質は、ある時はプラス、ある時はマイナスにくるくると入れ替わるので面白いなーと思います。
◉国境離島、文化交流の空間としての離島
北方領土(対ロシア)
対馬(対朝鮮)
小笠原諸島(対アメリカ、ハワイ)
など
離島には周縁部であるという性質があるので、外国との接触の窓口でもありました。朝鮮通信使は対馬を通してやってきましたし、小笠原ではアメリカとかミクロネシアの文化と日本の文化が混在した不思議な文化が生み出されました。
◉領土紛争、戦争の空間としての離島
北方領土(対ロシア)
竹島(対韓国)
尖閣諸島(対中国)
硫黄島(対アメリカ)
周縁部である性質がマイナスに働くと、こっちになります。これらは解決も難しく、外交にも負の影響を与え続けています。
時には戦争の舞台になったりも。硫黄島では悲惨な戦いが起き、大勢の犠牲者が出ました。
◉冒険の舞台空間としての離島
宝島(スティーブンスン)
バトル・ロワイヤル
など。
閉鎖性が性質としてあるので、非日常的な冒険の舞台として島はもってこいでした。宝探しとか、サドンデスの殺し合いとか、普通の生活ではありえないものも、離島という閉鎖的な空間では説得力を持ちます。
◉漂流者が暮らす空間としての離島
鳥島(伊豆諸島)
数多の無人島漂流物語(想像上)
閉鎖的なので脱出が困難。だから離島には多くの漂流物語が生まれました。救助の船でもやってこない限り、閉ざされた島で生活を続けなければなりません。
場合によったら島内を開拓したり、農耕牧畜をしたり。
◉強制労働の空間としての離島
南大東島(大東糖業)
南鳥島(アホウドリの乱獲、リン鉱開発)
佐渡島(金山)
離島は一つの会社が支配して、事実上独立国のような様相を示すこともあります。
独自の通過を使用され、島内の小売施設は全て独占。戦前の南大東島なんかは、まさにそんな感じだったようです。大東糖業という単一企業の王国が出来上がっていました。
なんか漫画のカイジの世界そのものですね。そして島に集められた労働者は、ひたすら悪条件の中で倒れるまで労働させられる。これも閉鎖的な離島だからこそ、可能なことでした。
離島は、そういったディストピアの舞台として有効なんですねー。
◉逃亡先としての離島
五島列島(キリシタン)
トカラ列島・奄美群島(平氏)
離島は本土から離れているため、本土で虐げられている人たちがエスケープする場としても活用されてきました。
隠れアジトのようなものでしょうか。これは離島の隔離性が活用されている例。
◾️色んな空間的意味を持つ離島
他にもあるかも知れませんが、ひとまずこのあたりで切り上げます。
いやー、離島が多様な意味合いを持つ多義的な空間であることが改めて実感され、ますます島が好きになりました。
今後も島にまつわるプチ哲学記事は挙げようかと思っています。何かご意見あれば、教えてくださいねー。
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